2022年7月2日(土)に第69回の研修会を行いました。
今回のテーマは『学びのユニバーサルデザイン「UDL(Universal Design for Learning)」』。講師毎年お願いしているバーンズ亀山静子先生と川俣智路先生にお願いしました。
「UD」は最近学校でも話題になることが多く、校内研究などでもテーマとして取り上げている所も多いのではないでしょうか。「UDL」の本場であるアメリカではどのような考え方で行われているのか。もしかすると、自分の思っている「UD」とは違うかもしれません。とても学びのある研修会となりましたので、以下、その内容を少しずつ紹介します。
○UDLの概念に則った社会科の実践発表
まずは、広島大学大学院に所属されている現職の小学校の先生から、UDLの概念に則った社会科の実践発表を行っていただきました。
この先生が意識したことは、学習方法を児童に選択させることでした。例えば社会では調べ学習を行いますよね。それを
・関係機関に電話をしてもいい
・インターネットで調べてもいい
・本で調べてもいい
と様々な選択を用意されていました。
また、学習のまとめ方も同じように、
・「紙にまとめるもよし」
・「スライドにまとめてもよし」
など、様々な方法を選択できるようにされていました。
さらに、これらだけでなく、学びの舵取り(学習の調整)を児童が自分で行うことができるよう、「学び方マップ」という学習計画を単元の初めに配付し、それをもとに授業の最後に毎回振り返り、学習計画の調整を行うという活動も行われたそうです。
○これはUDLに則っていたのか?!
実践発表の後は、バーンズ先生・川俣先生のお二人からこの授業はUDLに則っていたのか話していただきました。
お二人がお話されていたのは
・「UDL」は、授業に潜む学びのバリアを減らし、学習者の多様性に対応するためのフレームワーク(概念)であるということ
・偶然ではなく、事前に計画されていたものがUDLである。
ということでした。
UDLな授業の計画のためには、UDLクライテリアというチェックリストのようなもの活用すると良いそうです(クライテリアはこちら)。
それをもとに授業を考えるとUDLの概念に則った授業になりやすいとのことでした。
実際今回実践発表をされた先生もこのクライテリアを参考にされ、UDLの概念に則った授業を計画されていました。なので今回発表された実践はめでたくUDLに則ったものであったと言えるそうです!
○UDLかどうかの基準
改めてUDLの概念を踏まえた授業をどうやって作ればいいのかお話していただきました。その中で出てきたことは大きく3つです。
1.事前に計画をしているか
UDLは概念ですから、「授業に潜む学びのバリアを減らし、学習者の多様性に対応しよう!」という意識をもって授業を考えればそれはUDLな授業になっていると言えます。
でも、それだけではざっくりしすぎてよくわからない!という人のためにクライテリアがあります。このクライテリアでは「こういう視点で授業を考えてくださいね」というものがいくつか載っています(クライテリアはこちら)。
これを参考にすることがおすすめだそうです。
2.ルーブリックのゴールを目指しているか。
UDLな授業のために、クライテリアを参考にすればいいことはわかった。でもまだこのクライテリアだけでは抽象的すぎる。もっと具体的にイメージしたい!という方々のためにルーブリックも作成しているそうです(ルーブリックはこちら)。
UDLは概念ですから、必ずこのルーブリックを達成しないといけないわけではありませんが、このルーブリックを達成していればUDLな授業になっているとこのことです。
3.そこに向けて手段が用意されているか。
ルーブリックを通して教師側・子供側のある程度のゴールイメージは湧くはずです。では、そのゴールに向かうためにどのような手段を用意するか。そこまでしっかりと考えることも大切だそうです。
手段を考える際に大切なのは「学習の舵取りを行うのは子どもである」ということだそうです。あくまで教師はその舵取りのための選択肢を用意することだそうです。
○UDLに関するQ & A
ここからは研修会の中で出た質問とそれに対するお二人の回答を紹介していきます。
Q「困ったら友達に聞いてね」もUDLと言えるのですか?
→ これも子どもが学習方法の一つとして選択して行うわけだから、UDLの考え方を踏まえたものになる。
Q子どもたちの選択が良い選択でないこともあると思いますが・・・?
→すぐに良い選択をできるわけではない。行った選択が良かったかどうか振り返る時間がとても大切。それを通して選択がうまくなっていく。
→良い選択のためには全体のゴールを示すことが大切。何のために今から行う学習があるのかをしっかりと伝えた上で学習方法を選択をさせることで、良い選択ができる。
Q読み書きなど、表現方法が決まっている課題についてどうすればいいですか。
→「書き」の学習であっても手書きである必要はない。タブレットなどのデバイスを
使って音声入力を使ったりキーボードを使ったりすればいい。
→「話す」ことのゴールは「相手とのコミュニケーション」。それが目的なのだから、書けばいい。発音が必要な時は発音するしかない。でも限られる。
Q.UDLと合理的配慮の違いはなんですか。
→合理的配慮は 障害のある人がアクセスしやすくするためのもの。
○まとめ
最後に講師のお二人がおっしゃっていたことを紹介します。
小さなUDL化から始めよう
学級にいるすべての子どもたちのことを察知する、完璧に把握して、
30人いたら30通りの方法が必要になるのでは・・・?と考える必要もない。
できる限り学習者の声を聞いて、調整をしていくことが必要だそうです。
今回もとても学びのある研修会になりました。講師のお二人、本当にありがとうございました。
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