広島子どもの心支援ネットワーク第65回研修会

①協同学習の理論的なお話

 研修会の前半では、広島大学の栗原先生から、協同学習の研究から明らかになっていることを話していただきました。

 

○協同学習で学力は上がらない!?

 まずおっしゃっていたことは、ただ協同的に学習するだけでは、学力は伸びないということ。たくさん交流することで、子供同士の関係が良好にはなりやすいですが、学力を伸ばすためには様々な工夫を入れる必要があるとのことでした。ではどのような工夫が必要なのでしょうか。

 

○どうして手を抜く子供が出るのか

グループで学習をすると皆さんも気になるのは、人任せにして手を抜く子供達が出てくることですよね。この集団の人数が大きくなるほど、一人あたりのパフォーマンスが下がる現象」は、心理学でも「社会的手抜き」という言葉で表現されています。この社会的手抜きが起きやすい状況には「個人の貢献度の確認がされていない」「課題と自分との関係が薄い」「凝集性が高い」などがあるそうです。

 

○学び方で大きな違いがでます!

 学習方法という視点から梅本(2013)の紹介がありました。一部を紹介しますが、文字が多くなるので、色が付いているところにご注目ください。この研究では、大学生を対象に調査したところ、

 

  ○学習計画を立てたり、自分の学習状況を確認したりするメタ認知を刺激する活動を行うことで、 

    学習内容を関連付けた深い学びが生まれやすくなること。また日々の学習も継続されやすくなる

    こと。

  ○外発的な動機ではなく、内発的な動機をもって学習すると、深い学びが生まれやすくなることはも

    ちろん、ドリルなどの反復的な学習や、学んだことをまとめる学習も生まれやすくなること。さらに、  

    その学習が継続されやすいこと

  ○逆に成績を重視した外発的学習の場合、反復的な学習は生まれやすくなるが、学習の継続には

   悪影響を与えてしまうこと。

  ○協同的に学ぶことは、これらの深い学びや反復学習、まとめ学習に影響がないこと

 

が明らかになったそうです。

 これらの示唆を踏まえ、参加者でどのような協同学習が効果的かについてディスカッションをしました。今読まれている皆さんならどう考えますか?

 

最後に栗原先生からの協同学習というものは形や技法にこだわるのではなく、原理が大切であると教えていただきました。紹介された新潟のある小学校では、学び方の一つとして協同学習を取り入れており、「一人で学びたい人は一人で」、「協同的に学びたい人は協同的に」、など子供たちが学び方を選んで学習しているそうです。

 今回教えていただいたことをもとに、工夫を取り入れた協同学習を行っていきましょう!

(参考文献:梅本貴豊  メタ認知的方略, 動機づけ調整方略が認知的方略,学習の持続性に与える影響 (2013)

②校種別での実践的なお話

後半の研修では、小学校Gと中学校Gの2つに分かれて、協同学習の実践的な内容を教えていただきました。中学校Gでは、講師の先生に実際に授業を行っていただき、協同学習を体験することができました。私が参加した小学校Gでは、協同学習におけるICT機器の活用方法についてのお話でした。

講師の先生は、「学習の輪―学び合いの協同教育入門」を書かれているジョンソンらの提唱する協同学習の5条件や、スペンサー・ケーガンが提唱する協同学習の4つの指標に対して、ICTがどう活用できるかを整理しながらお話をしてくださいました。

どちらの研修も、明日からできることを見つけられる、学びのある研修でした。講師の先生方、ありがとうございました。

 

次回の研修回は1月22日(土)になります。テーマは自殺予防について行う予定です。コロナ禍において、孤独を抱え自殺する子供達が増えています。そんな子供たちを少しで支援するために自分たちにできることは何か、皆さんで一緒に考えていけたらいいなと思っています。

 

なお、11月13日(土)には、教育相談学会中国・四国ブロックの研修があります。オンライン開催で、参加費は無料ですので、ぜひご参加ください。(詳しくはこちらからお願いします)