広島子どもの心支援ネットワーク第64回研修会

 

 今回は、アメリカでスクールサイコロジストをされている先生大学の先生のお二人から、アメリカの学校でのICT活用の話をしていただきました。

アメリカの学校でのICT活用の歴史

 なんとアメリカでは,90年代には既に学校のホームページを使って課題を提出したりプリントをダウンロードしたりしていたようです。今の日本の状況が,20年前にもうあったということですよね。びっくりです。

 

 そんなアメリカが今日までテクノロジーをどのように活用してきたのか。

 

 2001年にNCLB法(一人一人の学習の伸びを保障する法律)ができ,効果があるという根拠をもった指導法を選択して取り入れるようになったそうです。その際,データに基づいた教育を行うために,テクノロジーが活用されていたとのことです。

 

 2010年以降には1人1台のICT機器が導入されたり,2013年以降には「bring your own device」という理念のもと,子供たちが自分に合ったデバイスなら家庭の物を活用して良いとなったようです。もちろん絶対にこれらを使わなければならないわけではなく,紙媒体が好きな子供は紙媒体を使用するなど,その辺りは柔軟です。

 

 その後は,合理的配慮を提供するためにICTのデバイスを活用していたそうです。そこから障害の有無に関係なく,誰もが使えるUDL(学びのユニバーサルデザイン)を提供するために活用されるようになったそうです。

オンライン学習の現状

 オンライン学習の現状についても教えてくださいました。Zoomなどを活用した,双方向のコミュニケーションをリアルタイムで進めるオンライン学習と,ビデオ講義を見たり,教材を使ったりしながら個別で学習を進めるオンライン学習を使い分けながら行っているそうです。

 また,学校での対面授業も合わせたハイブリッド式の学習でも,目的に応じた使い分けがあります。ゴールは子供が自分で学習をコントロールできるようになること。そのために,対面では,自律した学習ができるためのスキルを教えたり,よりリアルタイムのフィードバックをしたりするそうです。そしてオンライン学習では,自分で学習を進めていくようです。

 日本でも新学習指導要領から「主体的に学習に取り組む態度」を育むことが重視されるようになりました。「主体的に学習に取り組む態度」のポイントは、粘り強さと自己調整であると思います。これらを育む上でのICT活用について参考になるお話でした。

 

日本のICT活用のこれから

 テクノロジーはのいいところは,データに基づく指導が容易になること、そしてこれまでの方法では届かなかった内容に届けるためのもの。これから日本の学校現場では、一人一台タブレットを活用した学習が進められていきますが、ICTは使っていても、活用の仕方が50年前になっていないか?と注意点も教えていただきました。

 そうならないために最も大切なことが学びの伴走者としての教師へ転換すること。「どう教えるか」から「どうしたら学べるか」へのマインドセットを転換すること。40人いたら40通りの授業を用意するのではなく,40人それぞれが自分に合ったものを選べるようにサポートしていくこと。それが大切だと教えていただきました。